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いまやコスメと育児の話ばかりよ

1月17日。

※旧ブログから転載・編集。


NHKで放送された『LIVE! LOVE! SONG!』というドラマ。
制作スタッフが『その街の子供』を撮ったということや、推しメンのNMB木下百花が出ているので見た。

2016年は映画となって公開。

livelovesing-movie.com


福島の原発で避難を余儀なくされた当時小学生だった女子高生たちが、卒業前に小学校に埋めたタイムカプセルを掘り出しに行くロードムービーだった。
前半は正直、日本映画にありがちな感じだなぁ…と思ってみていたのだが、後半からがすごかった。


ああ、「ふるさとに帰れない人たちはこういう気持ちなのか」と。
ニュースに出てくる、避難した人たちは「先祖代々住んでいたこの土地を手放すのか」という中高年や、酪農や農業にかかわる「大人」ばかりがフォーカスされることが多い、というのが私の印象。

当時、子供だった人たちが中学、高校生という思春期に入って。
タイムカプセルも取りに行けない、成人式も地元でやれないかもしれない、神戸みたいに建物を建て直すことすらできないでいる、そんな故郷を持った子たち。


そういう子たちがいるんだ、というその事実。
あたりまえなのに、わかってなかったこと。


前半、主人公と木下百花がカラオケでPerfumeの『ワンルーム・ディスコ』を歌う。
最初は「うわー、NMBがPerfume歌ってる!」とちょっと嬉しくなった。
8割の人が新生活、一人暮らし。春からの希望、ウキウキわくわくドキドキな感じを照らし合わせて聞く曲だろう。

しかし、彼女たちは違う。


「新しい場所で うまくやっていけるかな」


「原発事故で避難してきた子」として生活をしなくてはいけないこと。
故郷があるのに、そこに入ることすらできないこと。


「私は宮城県出身で津波被害で避難してきたことにしている」という百花の役のセリフ。
こんな子が歌う、『ワンルーム・ディスコ』。

こんな『ワンルーム・ディスコ』があるんだ、と思った。

このドラマの主人公は、現在神戸に住んでいる。
阪神大震災と、東日本大震災の物語だった。

私は、阪神大震災にまつわるドラマも見た。
『神戸在住』だ。

劇場版 神戸在住 [DVD]

劇場版 神戸在住 [DVD]


雑誌『アフタヌーン』で掲載されていた、私の大好きな漫画だ。

阪神大震災から20年ということで、実写化された。
サンテレビ制作だったので、名古屋に私はどうやっても見ることができなくて、それで兵庫に住む友達に録画、DVDまで送ってもらった。


原作とは大いに設定がちがう。
神戸在住は、神戸の大学に通う女子大生の生活を描いた作品で、日記のような、コミックエッセイのような作品だ。
連載当時から時間が経っているので、まず登場人物たちは震災にあっていない。
そして、東日本大震災が起きている。
まず、ここがすごく違う。


主人公はめちゃくちゃ内気でさらに一浪していた。
すずきさんと洋子ちゃん、和歌ちゃんが仲が良くて桂ちゃんと4人グループ。
でも、なんか内気すぎて桂ちゃんは物語中盤まで全く馴染めていない。


そして、「阪神大震災のドラマ」ではなく、あくまでも『神戸在住』を実写化したということで、まさかの日和さんのお話。


この、日和さん、早坂くん、小西さんのキャスティングがすごい!!!
小西さんは松尾貴史さんがやってて、わたしでも「えええ、キッチュが小西さん!?」と思ったのに、すごくいい小西さんだった!!!
早坂くんは漫画から出てきたみたい!


そして日和さん。
すごくよかったのだ。
桂ちゃんとの、なんともいえない距離。


そして、「問題の展開」だ。


桂ちゃんは友達と馴染めてるようで馴染めてなくて、一人でどんどん塞ぎこんでいく。
原作ではあやさんに号泣して心を開くのだが、ドラマは和歌ちゃん、洋子ちゃん、すずきさんの前で泣くのだ。


ああ、ちゃんとこの子たちの前で泣けるようになったんだね、という、桂ちゃんを見守ることができる。


そしてここで「このドラマは阪神大震災がテーマではなく、神戸の学生のドラマだったんだ」と改めて思う。
確かに『神戸在住』なのだ。



途中、彼女たちの日常会話でこんなシーンがある。

「なんで地震なんて起こるんだろう」という子に、「でも、うちの両親、震災婚なんだ」とポツリという子。
震災がなかったら、私は生まれていなかった。

そういえばNHK『あまちゃん』でヒロインも「震災婚上等!」と大声で言いきっていたな、と思い出した。


こういう感じでちらほら、震災、地震、というワードが入っている。
日常的に、出てくる。
それは今、神戸に住む人たちのリアルなのかもしれない。



ひかりのまち / 中田裕二 directed by 及川謙一