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コスメや漫画や演劇やたまにライターの仕事の話とか

クリスマス企画:官能小説家 道中ヘルベチカインタビュー

Twitterの投票機能を使った「#投票機能 を使って小説を連載してみた結果wwww」などで話題の官能小説家、道中ヘルベチカさん。
フォロワー(読者)が物語を選べるとう参加型であることに加え、回を重ねるごとに物語の複雑さ、さらには企業の公式アカウントが登場するなどTwitterの機能や面白さを余すことなく使った小説となっている。
そんな道中ヘルベチカさんのインタビューを今回クリスマス企画としてお届けする。


道中ヘルベチカさんは、女性向けポータルサイト『ウーマンエキサイト』の夜向け媒体『夜オンナ』(「深夜だからこそ読みたいカラダとココロのコラム」をコンセプトにした夜時間帯のみ閲覧可能なサイト)で官能小説を連載中。

小説家はどのように物語を作っているのか? 執筆時間はどのくらい? ヘルベチカってどういう意味? などなど今回答えてもらった。
twitter.com


プロット書かない、その場の思いつき思いつきで割りと書いちゃう

道中ヘルベチカ(以下「チカ」):WEB小説はあとからまとめて読む?
三谷アイ(以下「三谷」):今は家にいる時間が長くなっちゃったので。勤めているときはリアルタイムで読んでましたね。
チカ:週1更新て早いのか遅いのかわからん。
三谷:うーん、どうでしょう。
チカ:ほんと、もっと筆の早い先生は週3更新とか週4更新とか。週4て。
三谷:週4!
チカ:週のほとんどやってる。
三谷:すごい。あれって、一話の文字数ってどれぐらいですか?
チカ:だいたい800~1200字って言われるんですけど、チカは割と長く書いちゃうから1200文字以上。
三谷:あ、やっぱりそれぐらいありますか。
チカ:うん。長いので1800字とか書いちゃうときもあるんですけど。でも本当早いライターさんは、800字ぐらいであ~本当ギリギリライン攻めてくるなみたいな。
三谷:ギリギリ(笑)。
チカ:チカは結構一話一話区切れてないと気持ち悪くて。そういうところは意識してやってる。どっちがいいんでしょうねぇ。
三谷:だいたいそれぐらい書くのにどれぐらい時間かかるんですか?
チカ:まぁいろいろですよ。もう思いついてるときは一時間程度でぱっぱと書いちゃうときもあれば、わりとなかなか次が進まないと一週間、二週間……。
三谷:延ばし延ばしな?
チカ:延ばし延ばし。チカ、プロット書かないんですよ。その場の思いつき思いつきで書いちゃうから。
三谷:そうなんですか?
チカ:そう。宮﨑駿みたいな。


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チカ先生直筆名刺。

官能小説はネットで評価しにくい?

チカ:『夜オンナ』の小説、読んでてどうですかぶっちゃけ。
三谷:ええっ!?
チカ:どうっすか。
三谷:え、それ私に聞きます?
チカ:だってあれ本当に反応ないんだもん。反応しようがないっていうのもあるかもだけど。
三谷:反応しづらいですよ~。読んでてもそれを「私いまこれ(官能小説)読んだの」って拡散しにくいじゃないですか。「え、何読んでんのあんた」ってなっちゃうから。
チカ:うん。
三谷:「なんだ?」ってなっちゃうからそれをどう返していいのか、すごく難しいですね。すごく面白かった・ドキドキしたとか返したくても、なかなかそれをどうフィードバックしていいのかっていうのはありますね。
チカ:DMも別に来ないしな……。
三谷:DMもやはり敷居が高い……。やっぱその媒体からSNSTwitterに行かなくちゃいけないじゃないですか。そこがやっぱ難しいかと。
チカ:あーやっぱり。
三谷:ページでも「いいね」押すぐらいなら全然できるんですけどね。
チカ:でも「(Facebook)いいね」も履歴に残る。
三谷:そう、残る。だからこう、残らないぐらいのなんかページだけの「いいね」みたいなのがあればいいんですけど。「気に入ったらココを押ししてね」ぐらいなら残らなくていいなって思うですけど。……だから、返しにくいです(笑)。

このキャラクターたちと会話するために物語書いてる

チカ:あれ、1作目(『妄想LOVEオフィス』)話ついていけました?
三谷:えっ? ついていけましたよ??
チカ:大丈夫?? あれも先の話全然考えずに書いてて。
三谷:え? そうなんですか?
チカ:書いててよく話つながったな~みたいな。
三谷:書いている自分でそれ思うんですか!?
チカ:「こことここつながったわ~」みたいな「こことここ繋がるんだ~え~知らなかった~」、「え~こいつこんな過去があったの~? 知らなかった~」って、書いてるほうが読者みたいな。
三谷ええー! それこそ全部プロットがあって、何話目でここつなげて出そうとか綿密な計画書でもあるのかと。
チカ:(かぶせ気味に)ない! 全然ない! 全然なしでやってるから時間かかっちゃう。でも時間あっても多分つまらないと思うんですよ。こういう流れになってるからってやっぱり、その流れに沿って話進めようとするじゃないですか。
三谷:はい。
チカ:そうすると主人公とかが、言わされてるようなセリフを吐く。
三谷:動きに制約が出てきちゃう感じですか?
チカ:そうそう。キャラブレが出てくる。そういうシナリオにしたいがためにやっぱり予定調和に。それはやっぱり嫌で。やっぱりキャラクターも生きてるんだからって。このキャラクターたちと会話するために物語書いてるから。
だってこういう話に、流れにする心づもりはあったとしてもいざ、その場面に行くとそういうセリフをキャラクターが吐いてくれないんですよ、やっぱり。だって、気持ちの面で「いやそんな気分じゃないから」「こうだよ」みたいな感じで言うから、あー…じゃぁって、そこでやっぱ話変えるし。
三谷:そうなんですか。
チカ:っていうのを、多分作家さん同士だと「わかるー」みたいにいう人もいるかも、しれない。
三谷:それは、作家さんでもタイプが違うんですか? 
チカ:やっぱり作家さんのいろいろいて。「プロット書かないと事故るから!」っていうAタイプ。「いやープロットなんていらないでしょ、書きながら考えるでしょ」っていうBタイプ。一つ一つの作品によって書き方を変える人もいるし。
三谷:あ、そうなんですか??
チカ:この話は何も考えずに書こう、次は一応プロット通りに進めてみようかな、みたいな。AとBの混合タイプ。
三谷:へーっ!
チカ:チカはBタイプだったけど、新作ではAタイプの書き方にも挑戦してみてる。けれどもなかなかうまくいかない。6話まで提出予定のところが4話までしかだしてない(※10月インタビュー時点)。
三谷:キャラクターが動いてくれない状態なんですか?
チカ:いまですねぇー……、どういう状態だろ。いまは過去を書く、裏づけを書こうとしていてそれがやっぱ苦痛なんですよ。
三谷:苦痛。
チカ:だって過ぎ去った話を書く、これ以上苦痛なことはないです。でも、意外とあるんですよね、そういう作品『ワンピース』もそうだし……要はテコ入れ? やっぱりそのキャラクターの過去を掘り下げるとそのキャラクターのことが愛おしくなる、っていうのはわかるけど……わかるけど、ね、後付じゃね? みたいな。
三谷:たしかに。いつからお前そんな人生歩いてたんだ、みたいな。
チカ:要らなくねー? みたいな。それより前に進みたいもんな、その過去とかどうでもいいわー! みたいな思うこともあるけど、ま、その『ワンピース』面白いんですよね、結局!


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チカ先生の小説は書籍化されていないので、代わりの手土産にとチカ先生のアイコンを描く月白涼(つきしろすずむ)氏のイラストが表紙の平原学さんのご本を頂きました。「チカの小説に劣らずエロい内容なので読んでみるチカ~」(byチカ先生)


なんかつまんないってポイって捨てちゃう

チカ:新作(『元カノとSNSスキャンダル』)はサビから書いてるんですよ。本当、渦中の状態から書いていて、それを1,2話と続けてるんですけど、3話ぐらいでだんだん過去を掘り下げつつやっていこうかなという。そして4話目で最初に戻る! みたいな。
三谷:でも前作『お隣のEROTICサウンド』もある意味そういうとこでしたよね。最初からもう隣に住んでて、なんで隣になったかっていうのを掘り下げる。
チカ:そうそう。そういうののもうちょっと発展版をやろうとしているわけです。そうなると過去の回想も若干ちょっと縮められるかなーとか思いながら。もうイキナリ渦中のところをもっと深く書いてて――、今の出来事の中に過ぎ去った思い出の話が語られる。つまり現在と過去回想を同時進行でやろうと思ってるんですよ。だから余計難しいと思うんですけど。
三谷:それ、頭こんがらがりません?
チカ:こんがらがる、もう。
三谷:やっぱり(笑)。
チカ:1話書いて、2話書いて、3話書いて1話目から読み返して。4話目書いてまた読み返して、だからプロットは書こうねって話! でも、プロットあってもつまんねーだろうなーみたいな感じがあるからなー。一応、プロット書くんですよ。書いても、なんかつまんないってポイって捨てちゃう。
三谷:(笑)
チカ:だってなぞるだけなんだもん。ホントの仕事のやりかたとしては、プロットを書く、構造シートを書く、それは正しい。けど面白いか・面白く無いで言ったら、まぁ書かずにやってみたが面白いんだよね。
三谷:ありますね。意外とコラムやPR原稿でも自分でも思ってもなかったところに言って、自分で読んでも「あれ、まとまってこれ面白いんじゃない?」っていうの、たまにあったりします。
チカ:そうそう。そういうのは多分、誰にでもある。よくまとめたなっていうところはある。
三谷:男目線女目線どっちが書きやすいですか?
チカ:いやーどっちも別にいいんですけどねぇ。ただ、女目線を書いてる途中で急に男目線のものを書いたりすると、だいぶ男のイメージがなんかだいぶ偏見的な感じになってしまって、ええーみたいな。だいぶステレオタイプな、俺様系になる。『お隣のEROTICサウンド』もだいぶ俺様だもん。
三谷:俺様ですねー、あの人は。
チカ:乱暴者なんですよ。でも男が書きやすいってこともないし、女が書きにくいってこともないのかな。
三谷:へ~そうなんですね~。


読んだあとエグるような感じにしたい

チカ:最初のやつ(『妄想LOVEオフィス』)も、あれも割と悲しい終わり方なんだけど。
三谷:ええ。
チカ:結局、途中から出てきた彼氏似の男とは別れる方向で終わってたんですよ。「それだとあんまりじゃない? もう彼氏さん死んでるんでしょ? なんかちょっと含み持たせて、救いのがあるぐらいのような終わり方にしたほうがいいんじゃない?」って知人の小説家、舟崎泉美さんに言われて。
まぁ作者であってもキャラクターの感情を全部司ってるわけじゃないから――。キャラクターの気持ちだし、やりたいように任せる主義なので……ラストで含みを持たせようが持たせまいが、その後の展開はどう転ぶか知らんしって思ってたんですけど――。でも処女作だし、物語としてのわかりやすさを取れば舟崎さんの助言に従うべきかと。で、直して。納品したあとで「すみませんちょっと直したので再納品させてください」と。
三谷:そうだったんですか。
チカ:まぁチカは救いのある終わり方とか、まぁ読んだあとスッキリはするけどあんまり好きじゃない。
三谷:えっ、そうなんですか。
チカ:読んだあと、えぐるような感じにしたいんです。
三谷:「残る~」っていう?
チカ:「残る~」「なんだったんだこの話?」みたいな。


ヘルベチカってロシアの美人ぽいよね

チカ:それにしてもTwitterで「取材来いや」っていったら真に受けやがってって……うそうそ(※この取材はこの日の朝Twitterで急遽決定した)。
三谷:ははは(笑)! 『ヘルベチカ』っていうライターネームはどこから来たんですか?
チカ:夜の連載決まったとき、家族から本名でやるなっていうストップがかかって。
三谷:家族ストップが!
チカ:とある句会に参加したら、読まれた句に『ヘルベチカ』が使われていて。文具屋の看板がヘルベチカ書体で書かれていたっていう句で、なんかわからないけど『ヘルベチカ』っていいよね! てなって。句の作者の方に「『ヘルベチカ』って言葉、今回の句会で初めて知りました。ペンネームに使っていいですか?」ってきいたら「勝手に使えばいいじゃん」て言われて。
三谷:そこから!
チカ:ほかの参加者が「ヘルベチカってロシアの美人ぽいよね、絶対巨乳だよね」って……。
三谷:あははは!
チカ:巨乳って! わかんないけど、でもそういう言われたらまんざらでもない、みたいな。で、それで先に『ヘルベチカ』が決まって。アイコンがうさぎなのは、イラスト描いてくれた友達(月白涼氏)が「だってうさぎって多産の象徴じゃん。いっぱい子ども産むじゃん。エロいじゃんぜったい」。
三谷:わかりやすい!
チカ:「ありがとう! じゃぁこのヘルベチカでLINEスタンプ作ろう」って言ったら「きょうみねー」って言われて。なんだよーアイコンしか描いてくれないのかよ~。
三谷:チカさんLINEスタンプは使いやすそうな気がしますね。上からでズバズバ言ってくれて使い勝手はいい気がします。私は夫に使いたいです。
チカ:まじっすか、需要あるよ! 言っとこ―! ちょっと高飛車な感じで 「いいねしろよ!」とか。
三谷:そうそうそう!
チカ:「シェアしろ」。
三谷:「返信は?」みたいな欲しいですね。「既読スルーとはいい度胸だ」とか。
チカ:やろう、それやろう。



チカ先生、ありがとうございました!

道中ヘルベチカさんプロフィール

『夜オンナ』にて小説連載中の官能小説家。うさぎのアイコンでおなじみ。アイコンは月白涼(つきしろすずむ) @wyds3 作。
Twitterhttps://twitter.com/HelveticaMi
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Togetterhttp://togetter.com/id/HelveticaMi
『夜オンナ』の最新話は毎週土曜日21:00公開。